創業100周年に向け、人財育成体制の見直しを決断
大和ハウスは、「建築の工業化」を企業理念として1955年に創業した歴史あるハウスメーカーです。戦後の住宅不足という社会課題に対し、プレハブ住宅の原点ともいえる「ミゼットハウス」を提供することで大きく成長しました。その後、社会課題の多様化にともない事業領域を拡大し、現在では物流施設、商業施設などの非住宅系事業が売上高の半分を占める規模まで成長しました。
同社は、2055年の創業100周年を見据え、大和ハウスグループのパーパス「将来の夢」を策定しました。これにともない、人財・組織開発部は人財育成のあり方を根本から見直すことを決め、「Keep Learning, Growing, and Dreaming.」をコンセプトとする新たな人財育成ポリシーを完成させました。しかし、従来の人財育成はこのコンセプトに合致しないものだったと人財・組織開発部長の
菊岡大輔氏は話します。
「たとえば、従業員向けの階層別教育は、新入社員時に実施すると、次は役職が付くタイミングでの実施となり、その間のキャリアアップや能力開発を継続的に支援する仕組みが不足していました。大和ハウスの社是である、“事業を通じて人を育てる”にふさわしい人財育成体制を整えたいと考えていました」(菊岡氏)
「個別最適」と「自律学習」が期待できるコーナーストーンを選定
課題解決に向けて人財・組織開発部は、「従業員一人ひとりに個別最適化された学習を提供すること」、そして、「従業員に自律的な学習の習慣を定着させること」を目標に掲げ、学習管理システム(LMS)の導入を決定しました。LMS製品の選定では次のような要件を定めました。
- 従業員の学習意欲を高める、直感的で使いやすいUIを備えていること
- 従業員の属性に応じて、パーソナライズされた学習を提供できること
- 外部コンテンツとの連携により、幅広い学習コンテンツを提供できること
- 社内に散在している学習コンテンツを集約し一元管理できること
- 将来的に学習履歴データ等を人事システムに連携し、タレントマネジメントに活かせること
人財・組織開発部は、複数のLMS製品を入念に比較し、上述の要件を全て満たす「Cornerstone Learning Management」の採用を決めました。人財・組織開発部 次長の松本由香子氏は、選定に
おいて特に重視した要件についてこう話します。「以前は、研修の通知や実施を複数の異なるシステムで行っていたため、従業員にとって非常に分かりにくい仕組みになっていました。コンテンツの一元管理や、見やすい・分かりやすいUIなど、従業員視点で学びやすいLMS であることを重視しました」(松本氏)
人財・組織開発部 主任の小山内翔太氏は、学習体験のパーソナライズを実現する各種機能を高く評価しました。「個々のスキルや経験に応じた学習の提供は、LMSで解決したい重要課題の1つでした。その点、コーナーストーンは、従業員の属性情報を豊富に保持でき、属性に応じたコンテンツレコメンドを柔軟に行うことができます。学習体験のパーソナライズに関して、他社製品よりも広がりや可能性を感じた点が選定の決め手となりました」(小山内氏)
8,500以上のコンテンツを提供する学びのプラットフォームを公開
大和ハウスは、2024年3月より導入作業を始め、4カ月後の2024年7月に学びのプラットフォーム「&D Campus(アンドディーキャンパス)」を全従業員約16,000人に一斉公開しました。旧システムから数百の自社学習コンテンツを移行したほか、動画研修サービス「Schoo(スク―)」が提供する、全20カテゴリ8,500以上の学習動画コンテンツを公開しています。従業員は業務指示に基づいて受講するほか、余暇時間などにスマートフォンアプリで自由にコンテンツを視聴できます。
連携する外部コンテンツにSchooが選ばれた理由は、コンテンツの網羅性と適切な難易度にありました。「Schooは、最新のビジネススキルだけでなく、リベラルアーツや趣味的なカテゴリまで幅広い分野を網羅していました。難易度は易しすぎず、難しすぎず、動画の長さもちょうど良かった。“これなら学んでみよう”と従業員の学びのトリガーになることが期待できました」(松本氏)
Schooのコンテンツは、各職場の研修において、グループの意見交換や議論のきっかけ作りに利用されるケースもあります。「人財・組織開発部では先日、『私たちはいつまでうな丼を食べられるのか』というSchoo動画を研修の教材にしました。いわゆるリベラルアーツ分野の動画でしたが、業務に活かせる要素が多く、興味深い研修になりました。研修後にみんなでうな丼を食べに行っ
たことも含めて印象に残る学びの機会になりました」(小山内氏)
大和ハウスは、若手社員と先輩社員による1on1ミーティングや、従業員のキャリア志向をヒアリングする自己申告を定期的に実施していますが、これらの取り組みでもSchoo が活用されています。「1on1ミーティングや自己申告を実施する前に、『コーチング』や『キャリアプラン』など、関連する動画を社内に周知することで、人財育成施策の効果がより高まるような工夫を行っています」(菊岡氏)
学習動画の視聴を昇格要件に組み込んだ、新たな階層別教育を開始
大和ハウスは、&D Campusの公開にあわせて、従来の階層別教育を大幅に見直した「階層別能力開発コース」を新たに始めました。この施策は、従業員が次の等級にステップアップするための準備として、上位級に求められるスキルやコンピテンシーの習得に役立つSchoo動画を視聴させる取り組みです。現在、大和ハウスには1~9まで等級がありますが、部長~上級課長クラス(1~3等級)と初級社員(9等級)を除く、4~8等級の従業員を対象に、等級に応じた動画コンテンツを提供しています。対象動画の視聴を上位級への昇格要件の1つに組み込むことで、従業員がキャリアアップと能力開発を同時に進められる仕組みを構築しました。「動画の視聴を昇格要件に組み込むなど、&D Campusの利用機会を意図的に創出することで、従業員が様々な学習コンテンツに触れ
、自律的な学習に取り組むきっかけになればと考えています」(松本氏)
人財・組織開発部は、&D Campus を普及させるため、告知バナーやプロモーション動画を大和ハウスの各拠点に設置されたデジタルサイネージで公開するなど、積極的な認知活動を展開しています。これらの施策の結果、全従業員の93%にあたる約15,000人が毎月1回は&D Campusにアクセスするなど、新たな取り組みは着実に社内に浸透しつつあります。
リスキリングの時代にも対応可能な人財育成基盤が完成
大和ハウスの人財育成に様々なメリットをもたらしている&D Campusは、経営視点から見てもメリットが大きいと菊岡氏は話します。「当社では定年を歳に延長する計画を進めています。働く期間が長くなれば、求められるスキルの変化に従業員自身が対応しなければいけない機会が増えていくでしょう。いわゆるリスキリングの重要性がますます高まっていくわけですが、&D Campusはそのようなニーズにも対応できる基盤であり、経営の観点からも非常に大きな意義があると考えています」(菊岡氏)
大和ハウスでは今後、個別最適化された学習の実現に向けて、個人の属性やキャリア志向に応じた学習コンテンツのレコメンド施策を進めるほか、自律的な学習の定着に向けて、従業員の自主的なコンテンツ視聴率をKPIとしてモニタリングし、学習文化の醸成を図っていくことを検討しています。同社はこれからも、「Keep Learning, Growing, and Dreaming.」の体現を目指し、人財育成のさらなる強化を図っていきます。

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