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人事領域におけるAIの真価~効率化を超えた活用方法~

マッキンゼー・アンド・カンパニーの調査によれば、企業のビジネスプロセスにおけるAIの導入が前年比で25%増加しており※1、人事業務にもAI活用の機運が訪れています。ただし、この業務にAIを適用する際には、取り組むべき多くの課題があります。

例えば、多くのHRソフトウェアベンダーはプロセス指向のソリューションをAIで拡充していますが、従業員とビジネスの双方に有意義な影響を与えるかたちで従業員体験を向上させるという約束を完全には果たしていません。

なぜなら、人事向けAIソリューションの多くは、柔軟で変化するさまざまな状況を理解して成果を上げるためではなく、プロセスを最適化することを目的に開発されているからです。

※1 マッキンゼー・アンド・カンパニー『Global AI Survey: AI proves its worth, but few scale impact』(2019年11月)

人事のための真のAIソリューションに向けて

人事業務でAIの真の可能性を実現するためには、定性的なキャリアデータや従業員データを、解釈と測定、比較が可能なデータに変換するだけでは不十分です。AIは、組織と従業員が成功するためには何が必要かについて、有意義な予測を行うためにデータを解釈/分析できなければなりません。

本記事では、次のような洞察を得ることができます。

  • 管理業務の効率化を超えた、人事業務におけるAIの真の価値
  • ビジネスのダイナミックな変化を予測し、迅速に対応するためのAIの活用法
  • 人事向けに構築されたAIが、キャリア開発やスキルアップなどに関するよりパーソナライズされたアプローチをどのように実現するのか

より良い従業員体験を創り出し、ビジネスの成功を促進するための人事におけるAIの真の可能性をご紹介します。

人事向けAIに必要なのはデータ中心のアプローチ

AIは人事部門に変革をもたらす要素の一つとして注目されていますが、その応用には多くの課題が伴います。前述のように、多くのHRソフトフトウェアベンダーはプロセス指向のソリューションをAIで強化していますが、完全に約束を果たすまでには至っていません。人事のデータが持つ複雑さを有意義に解析できるAIを開発するには、長期的な取り組みに加えてテクノロジーと方法論に対する真にデータ中心のアプローチが必要となります。

この努力には大きな見返りがあります。適切に実現できれば、人事へのAIの応用はプロセス主導型やトランザクショナルなソリューションを超え、従業員と組織の成長を加速させるために人事に真の変革を起こすことを可能にします。

AIは新しい経験によって学習する

人事向けのAIソリューションは、プロセスの最適化に特化して構築されることが多くあります。その好例がチャットボットであり、AIを活用したチャット機能で従業員に有用なリソースを紹介することで、人事部門の管理業務の負担を軽減します。しかし、これまではAIが管理業務の合理化を超える価値を人事部門にもたらすのかどうかについては不透明でした。

あらゆる経験は、解釈可能なデータとして表現できます。利用できるデータが多ければ多いほど、AIシステムはより効果的になります。GAFAM(Google、Apple、Facebook、Amazon、Microsoft)やBATX(Baidu、Alibaba、Tencent、Xiaomi)といった企業のAIソリューションが成功を収めている理由はそこにあります。これらの企業はデジタルの世界を熟知しており、膨大な量の解釈可能なデータを所有しています。一方、より専門的な分野(例えば人事)のアプリケーションでは、解釈可能なデータを使えないことが、これまでAIソリューションの開発を妨げてきました。

最適なAIソリューションを選ぶのは至難の業

全ての規模の企業において、人事部門のユースケースは、採用プロセスの合理化(自動スクリーニング、面談スケジューリング、オンボーディング)から、タレントマネジメント(キャリアカウンセリング、専門的トレーニング)、戦略的意思決定(スキルマッピング、専門家の活用、組織再編)に至るまで、業務の多様な側面に及びます。

しかし、人事部門は効率的なAIベースのシステムを構築するのに必要なデータを収集して処理する準備が整っていないため、AIの専門企業が提供するAIサービスを利用するほかありません。

AI専門企業のサービスを利用すれば、データ分析や製品開発にかかる期間を大幅に削減できます。しかし、残念ながら専門家ではない人が企業の巧みなセールストークに惑わされずに自社に適したAIベースのソリューションを選ぶのは至難の業です。また、組織の在り方やユースケースは企業によって異なるため、各社の既存プロセスを基に作られたシステム環境にAIシステムを統合するのも困難でしょう。

人事データをAIで扱う際の難しさ

AIソリューションの構築を検討する際、データは必須の出発点となります。AIとそれを支えるデータサイエンスは、定量的なデータを扱うために生まれたものであり、今日でもこの処理に適しています。例えば、株価、保険の不正率、配送時間やコストの分析などです。

一方、従業員とキャリアのデータは定性的なものです。個人のキャリアに関するデータ(職種、業務内容、スキル、学歴など)は自然言語(私たちが毎日コミュニケーションに使っている言語)で表現されますが、自然言語は曖昧で有機的です。不正確さ、感情、比喩に満ちており、分析のためのカテゴリーデータとして定量化するのは信じられないほど困難です。

このようなテキストデータを処理することは不可能ではありませんが、自然言語プロセッサ(NPL)と呼ばれる特定の科学的ツールが必要となります。そして、NLPツールを使ったとしても、人事データの解釈では次のようにNLPの範疇を超えた新たな課題に直面します。

複雑さ ─ 従業員の経験、スキル、キャリアから有益な洞察を得るためには、コンテキストが重要です。例えば、役職名に「DR」という文字列を含む従業員について考えてみましょう。その従業員は博士号を持っているということでしょうか?それともMD(医師:Medical Doctor )?ディレクター(Managing Director)の略でしょうか?もしかしたら何らかの頭字語かもしれません。

一貫性 ─ 用語の一貫性も重要です。例えば、ある個人がスキルセットとして「営業」と書いた場合に、それが必ずしも同じことを意味するとは限りません。例えば、B2Bの営業でしょうか、それともB2Cの営業でしょうか。また、時間的(例:一般営業職と上級営業職)にも、空間的(例:会社や部門の違い)にも異なる場合があるでしょう。

AIで有意義な人財予測を行う

企業が持つ何百万もの従業員プロフィールの一つひとつに、複雑で一貫性のないデータが多数含まれています。そのため、独自の人事AI ツールを社内で構築するのは非常に難しいのです。キャリアデータの自動処理には、人事と自然言語処理の両方の専門知識が必要となります。

キャリアと従業員の定性的なデータを、解釈と測定、比較が可能なデータポイントに変換することが、人事AIソリューションの実現における第1ステップとなります。

また、第2ステップでは、このデータに基づき、特定のキャリアに関する状況や行動に関して有意義な予測が行える複雑なモデルを定義します。例えば、ある従業員Xの職務経験に関するデータに基づいて、次のようなことを予測できるモデルです。

  1. この従業員はYの仕事に適しているか?
  2. この従業員は会社を辞める可能性が高いか?
  3. この従業員は職種変更に成功しそうか?

一見すると中立的ですが、これらの質問の記述には重要な倫理的選択が反映されています。アルゴリズムが人種や性別、年齢などに関する偏見を示さないことを確認しなければなりません。そのために、AIソリューションを定期的に評価し、偏見を積極的に軽減するための措置を講じる必要があります。

この大変な作業が全て完了したら、AIソリューションの導入準備が整ったと思うかもしれません。しかし、まだやるべきことがあります。それぞれの業界や企業、部署に特有の用語や用語の使い方に合わせてAIモデルを微調整し、適応させるのです。この追加学習のプロセスは、現実の問題を解決する際に遭遇する予期せぬケースにも対応できるよう、ソリューションを堅牢にするうえで極めて重要です。

人事AIにおけるデータ駆動型とプロセス駆動型の違い

デジタル化は、人事担当者の業務負担を軽減してビジネスへの影響を最適化するための強力な手段となりました。多くのHRソフトウェアベンダーが、人事データを構造化して保管し、業務プロセスをサービスに統合することに関しては大きな成功を収めています。しかし、忘れてはならないのは、データの保管と表示(またはデータに関して明確に定義された厳格なプロセスの実装)は、データの実際の意味についての理解なくしては不可能だということです。

実際、人事向けのAIソリューションを構築するには、全く異なるアプローチとスキルセットが必要です。大手HRソリューションベンダーの製品はプロセス駆動型であり、決められた業務プロセスを実行する目的でデータをコピー、ペースト、フォーマットします。その結果、それらのソリューションを構築する際の作業の大半は、いわゆるパラメータ化(パラメータを定義または選択するプロセス)に費やされます。

それに対して、AI製品はデータ駆動型であり、データと、データから必要な情報や結果をどのように得るかに重点が置かれています。技術開発のターゲットは製品開発の上流工程に集中しています。そのため、ほとんどの大手HRソリューションベンダーは、AI製品の構築に関しては競争優位性を持っておらず、基本的にゼロからのスタートとなります。

コーナーストーンは“従業員中心”でAIにアプローチ

コーナーストーンのスペシャリストらは、データとドメインに関する知識の両方を最大限に活用して、完全なAIソリューションの実現に向けて急ピッチで取り組んでいます。私たちは過去10年以上にわたって人事データの分野で研究開発を行うとともに、最先端のNLP技術を導入してきました。その結果、AIと人事の双方に関して世界トップクラスの専門性を有しています。

私たちのアルゴリズムは、人と企業の背景を深く理解したうえで、役職と人財の間のマッチングを推奨します。この役割は、一人の人事担当者が果たせる範囲を超えたものです。私たちのアルゴリズムは、あらゆる業界について学習し、何千ものプロフィールを精査して、組織内で募集中の役職のいずれかにマッチングすることができます。

ユーザーに焦点を当てることで、人とAIの対話が促進されるため、長期的にはAIにとって非常に有益です。ソリューションが頻繁に使われるほど、より多くのデータが生成され、アルゴリズムが強化されるという好循環が生まれます。これにより、例えば「主な必要スキルに関する現在の市場動向」などのように、関連する全ての分野における傾向の変化を追跡できるようになります。

人事向けAIは組織に真の変革をもたらす

AIソリューションは本質的に機能横断型であり、そのユースケースは特定のタスクの合理化や最適化に限定されません。AIソリューションの解釈と分析に関する能力は、柔軟で変化するさまざまな状況を理解し、成果を促進するために活用できます。

例えば、人事AIソリューションにより、組織は従業員に学習の機会を推奨し、それぞれのキャリアに共通の軌跡を精査して、重要なスキルを組織の要件にマッピングすることができます。

この予測的でインテリジェントな意思決定や推奨を行う能力こそ、真のAIと、HRソリューションベンダーがしばしばAIと誤認しているビッグデータ機能とを分け隔てるものです。多くの取り組みが必要となるものの、人事向けAIは組織に真の変革をもたらす可能性を秘めています。これからの仕事において、組織はテクノロジーや業界の変化に対応していくために、常に必要なスキルを特定し、開発する必要があります。AIのパワーを活用することで、人事部門はこの取り組みを主導し、従業員と組織の可能性を実現することができるのです。

全世界7,500万ユーザー、過去20年のデータで人事AIの未来を築く

全世界に7,500万人のユーザーを持ち、それらの人々の過去20年以上にわたるデータにアクセスすることができるコーナーストーンは、新たなAIイノベーションを発掘して分析、開発するための労働力に関するデータを豊富に蓄積しています。このデータを活用して、全社から集結したデータサイエンティストや機械学習の専門家から成るグローバルなセンターオブエクセレンス(CoE)のコーナーストーンAIイノベーションラボが、AIテクノロジーを職場に適用するための実用的かつ倫理的な方法の革新に取り組んでいます。

コーナーストーンのAIイノベーション が、人事部門のあらゆる業務の変革をどのように推し進め、組織を新たな高みへと押し上げるのかをご確認ください。

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